真夜中のフィロソフィー

私が考え込む時間

たぶんあんな気持ちになることは

もう生涯ないんじゃないかな。

 

何気無い自分の言葉が急に重たくなって、なんてね、と付け足して笑う。するとあなたも困ったように、「お前のこと持ち上げるわけじゃないけど」って。「実は俺もあれ以上の恋愛はできないと思ってんだよな〜〜」って言った。

 

一目見てあなたが欲しくなって、あなた以外いらなくなった。世界の全てに意味がある気がしてだけどあなた以外のことにはたいした意味なんてない気もした。そんな風に激しい感情をわたしは知らなかったし、私にとって貴方はたぶんきっと、

「初恋だった」

聞き慣れたあなたの声が降って来て私の心の声と重なる。あの頃の私たちは若くて、向こう見ずで、ぶつかって、壊れかけて、喜びも痛みも希望も憂いも分け合って、二人でひとつで、二人いれば怖いものなしで。

「いい男と付き合えよ」

「いい男って?」

「頭が良くて面倒見が良くて面白くて優しい、俺みたいなやつのことだよ」

「ばーか(笑)あなたもね。可愛くて綺麗でおもしろくて頭が良い、わたしみたいな良い女見つけなね」

何かが違えば私たちきっと、きっとずっと一緒にいれたのに。

 

「ねー、またあそこのフレンチ食べに行こうよ」

「次会うときは、割り勘でもいい?(笑)」

「やだよ(笑)じゃあ会わない(笑)」

 そんな冗談も言えるようになったから、私たちはオトナになってしまった。

横浜駅。 

最後のキスは、ワインの味がした。