真夜中のフィロソフィー

私が考え込む時間

 

「一生老いない肉体と、一生老いない精神、手に入れるならどっちがいい?」

 

最後の夜、空を見るように質問された明け方。

人間の本質を無理矢理にでも剥き出しにするような、そう言った類の質問を、あいつはどこを見るでもなく唐突に投げてくることがあった。こういう問答を、思えば2.3年前にはよく夜中に二人きりで話していて、だけどいつしか私達はお互いに恋人が出来たりして、なんとなく二人きりで会う機会も減って、こういう話をするには忙しくなってしまった。

 

2.3年越し、二人だけの空間とこういう類の話題はどこか懐かしくて、歯痒くて、嬉しかった。

どーだろうねえ、と前置きをして私は考える。

『変化って私割と好きよ、それ自体が美しい気がする。10年後も20年後も変わらない精神なんて退屈だし全く興味わかないなあ。衰えない肉体ってなんか響きは素敵だけど肉体の変化が結局一番精神に影響するだろーし、それに何より孤独じゃん。私どっちもいらない。』 

あなたはどっちがいいの?って聞くと、いやおれもどっちかというと永遠の肉体が欲しいんだけどまあどっちもそんなに欲しくはないなあ、と遠い目をしていったあいつ、あいつはいま何を見ているんだろうか。

 

「お前って考えてないふりするのにすごい一生懸命だよな」

 

あの夜あいつが何気なく、天気の話でもするような軽さで、わたしを恐ろしいほど正しく分析した時も、あいつはやっぱり空を見ていて、そのどうでもいいような目線と言葉とに、私思わず泣きそうになったよ そんな風にいとも簡単に理解されてしまっている恥ずかしさと嬉しさとそしてやっぱり恐ろしさで。

 

あいつが私に目もくれずに投げかける言葉が、私は嫌いじゃなかった

『ねえ もっと、私達、色んなことをたくさん話せばよかったのにね』と呟いたわたしに、そーか?(笑)、ってかっこわらいつけて話すあいつは憎らしかったし、そのことにあいつは気付いていたと思う。 

お前ら似てるよねって色んな人に言われたね私達。表面の色が似ていたのかな、いつもどこか茶化しているような雰囲気だとか適当さとか、そういう表面の色が。だけど私はさ、もっと深いところの色、例えば目標とする生き方とか、でもそうなれない葛藤とか、溜息の色とかさ、問答がすきなところ とか、なんていうかそういう皆んなが知らない 皆んなには決して明かさなかったような部分の色が、似ている気がしていたよ。最後まで言わなかったけれど。

『わたしはあなたの余裕がすきだよ、小さいことに腹を立てたり取り乱したりしない余裕が』

あ〜〜よく言われるって笑ったあいつは、やっぱり憎たらしかった。

あいつはそのあと私の好きなところを教えてくれて、私はそれがとっても嬉しかったんだけど、誰かに教えるには勿体無いから私だけで反芻しておくことにするよ、